世界保健機関(WHO)の総会で採択されたパンデミック条約。新たな感染症の世界的流行(パンデミック)に備えるこの条約交渉には、巨大製薬企業を抱える米国は加わっていない。米国不在の影響や背景にはどのようなことがあるのか。条約交渉にオブザーバーとして関わる非営利の医薬品研究開発組織「DNDi」の北米支部元トップで、現在はシニアアドバイザーのレイチェル・コーエンさんに聞いた。
――条約の採択をどう評価しますか。
米国の不参加にかかわらず、グローバルヘルスが地政学的にもろくなっている時期に、この合意がまとめられたことは心強いです。歴史的なことであり、極めて前向きな一歩だと思います。
しかし、これは始まりに過ぎません。今後、各国が実際に政策を整え、正式発効の準備をしなければいけません。
製薬業界の懸念は知財保護
――この条約で何が変わりますか。
新型コロナのパンデミック前…